西洋古典を読む(2022/9/7)(その1)

福西です。

ウェルギリウス『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)を読んでいます。

9巻の691-777行目を読みました。

トゥルヌスの活躍が歌われます。

トゥルヌスに恐れをなして、トロイア側のパンダルスという若い巨漢が砦の門を閉めようとします。

このとき、

1)味方がまだ大勢外にいること

2)トゥルヌスが砦内に紛れ込んだこと

この二つがパンダルスの犯したミスです。ただ、作中では1)にはそれほど触れられていません。

2)には、作者はパンダルスのことをdemens(理性を失った、狂気の)と呼んでいます(9.728)。これをどう訳するかですが、「愚か者よ」というよりは、人間的なミスを犯した者よ、ということだと思います。非難の声というよりは、同情の声ではないかと。

というのも、『農耕詩』で、オルペウスが後ろを振り返った時、彼もまた狂気にとらわれた一人だったからです。

dementia cepit amantem(Geo.4.488)

狂気が(dementia)恋人(オルペウス)を(amantem)とらえた(cepit)

もし、このオルペウスに同情するのであれば、パンダルスにもそれを適用できるのではないかなと思います。

(その2)に続きます。