福西です。
『赤毛のアン』(モンゴメリ、村岡花子訳、新潮社)を読んでいます。
p107~120、第9章「レイチェル・リンド夫人、あきれかえる」を読みました。
レイチェル・リンドがアンと顔合わせします。その時、レイチェル・リンドは「まるで人参のような髪!(hair as red as carrots!)」と地雷を踏んでしまいます。
このときのアンの勢いは、以下の通りです。
アンはくることはきたが、リンド夫人が予期していたような来方ではなかった。ひととびにリンド夫人の前へとんで行き、顔を怒りで真っ赤に燃やし、唇をふるわせ、ほっそりした体を頭から爪先までうちふるわせながら突っ立った。そして床を踏みならして「あんたなんか大きらいだわ」と声をつまらせながら叫んだ。「大きらい──大きらい──大きらいだわ」(…)
ここは、どんな映像よりも、原作の活字の方が、想像力を刺激する場面でしょう。
レイチェル・リンドは、いわば「一般人代表」です。そこそこに善良で、そこそこに無責任で、自分の固定観念を信念と疑わず、またお節介を「正しい」と思える人たちの。当然、孤児であるアンに対しても、根強い偏見を持っています。その彼女が、これからどのようにアンの味方になっていくのか。この作品の味わいどころです。
オセロにたとえるなら、アンにとって、マシューは最初に取った隅、マリラは辺、そしてレイチェル・リンドや村の人々は、残りの部分といったところでしょうか。
(その2)へ続きます。