『トムは真夜中の庭で』を読む(西洋の児童文学を読むB、2022/1/21)(その1)

福西です。

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。

21「いつも「時」のことばかり」を読みました。

トムは、アランおじさんから、「時」についてレクチャーを受けます。しかしトムが不用意に天使(黙示録)を持ちだしたので、現代的な説明をしているおじさんは、はぐらかされたと思って怒ります。おじさんはなんとか気を取り直し、説明を再開します。そこで、リップ・ヴァン・ウィンクルのたとえに、トムはひらめきます。

リップ・ヴァン・ウィンクルは、眠っている間に100年がすぎていたという、浦島太郎の海外版です。

トムは、自分がリップ・ヴァン・ウィンクルの逆、つまりハティの時間(過去)にタイムスリップしているのだと推理します。

ぼくの『時』は、あの子には未来に思われるかもしれないけど、ぼくにとっては現在なんだ。

時間がずれているだけで、ハティも庭園も、幽霊ではないと確信し、トムは喜びます。

一方、トムの心にだんだん次のような決心が生まれます。

ハティの「現在」と庭園を、いま、ここで、永久に手にいれることができるかもしれない。

「時間」を「永遠」に変えることがこの物語の主題です。

(その2)に続きます。