ウサイン・ボルト選手は、「運動会を控えた日本の子どもたちになにかメッセージを」という問いかけに、笑顔で「エンジョイ」と答えていました。

「楽しむことを学べ」という金言は2000年前の哲人セネカの言葉です。「なんだ簡単なことだ」とは言えません。難しいから金言になるわけでしょう。

エンジョイするためにこそ努力が必要です。努力が目的ではありません。ボルトは「ウィン(勝て)」とは言っていません。勝利が目的ではないわけです。努力し、勝利すれば、楽しめる(喜べる)という(日本人的発想の)流れを言っているわけではありません。

なにもせずに何でも「ああ楽しい!」と無邪気に言えるなら、なにもしなくてよいでしょう。

勝負して負けて本当に悔しいなら、その悔しさはジョイ(喜び)ではないので、再トライしてそれを求めるでしょう。エンジョイしたいと思うのは、人間の本能に根差しています。本能にスイッチがはいれば、本人は「努力するぞ!」と自分に言い聞かせる必要もありません。放っておいても猛然とダッシュを繰り返すでしょう。

「エンジョイ!」とは「本能にスイッチを入れろ」とワイルドに意訳可能です。

そういう意味で考えると、園児たちに「エンジョイ」というのは、釈迦に説法という感はあります(勝負にこだわり始める小学生以上の子どもには有効だと思います)。幼児は大人が思う以上に本能に忠実であり、勝手も負けても切り替えは大人より早いです。

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