本園では年長の三学期には劇の取り組みをしています。
ご家庭での練習が大切であることは今迄機会あるごとにお伝えしてまいりましたが、具体的な方法についてあまり細かくお話しする機会はありませんでした。
一つには方法を細かくお伝えすることで、多様なアプローチの選択肢を狭めるのではないかという懸念があったためです。
山のてっぺんには様々な角度から到達可能です。ゴールは明確なので、そのアプローチは各ご家庭でお考えいただけたらと思います。
保護者会の補足として、ガイドライン(一例)を参考まで書きます。
1 (初日)担任からのメモに基づき、担当する役を子どもと確認する。
2 (初日から自信がつくまで)担当箇所のせりふを親が声に出して読む。それを耳で聞いて、子どもが復唱する。名付けて「俳句方式」。
3 そのさい、最初のうちは子どもが復唱しやすい量を考慮し、できるだけ短い単位で区切る。一文単位でなく、読点までを一単位としてもよい。「俳句」の場合、5、7、5(文字)単位で練習しているので、親が思う以上に細かく区切ってよい。子どもはそれに慣れている。
例)「あるところに、たいへんなかのよい、きつねのおやこがすんでいました。」であれば、3つに分けて読む。「あるところに」(親)→「あるところに」(子)、「たいへんなかのよい」(親)→「たいへんなかのよい」(子)、「きつねのおやこがすんでいました」(親)→「きつねのおやこがすんでいました」(子)。最後の「きつねの・・・」は「きつねのおやこが」と「すんでいました」に分けてもよい。
4 正確に復唱できたら、「そう」とか「よくできたね」と言葉を添える。
5 子どもの集中の続く時間は個人差があるが、俳句の時間は平均10分。親として時間のコントロールも重要。
6 「俳句方式」で子どもとやりとりし、担当箇所のすべてを網羅できなくても、10分で終わりにしてよい。次の日は続きからすればよい。
7 担当箇所を初日から全部カバーする、と意気込むとおそらく10分をオーバーする。初回の練習が一番時間がかかるため。やがて、細かく区切らなくてもよくなる。親が先に声に出さなくてもよくなると、時間は半分ですむ。大事なことは、「俳句方式」をていねいに続けること。
8 子どもに自信がついてきたと思わるとき、「ひとりで言ってみる?」と声をかける。「うん」と張り切るならそれでよし、もしためらいの表情なら、「じゃあ、今までと同じでやろうね」と優しく言う。
9 「うん」と張り切って言う場合、微妙な間違いがないか台本をよく見て、チェックする。ミスをみつけたら、「一人でよくできたね。ちょっとよく聞いてくれる?(といってお手本を言う)一か所違う言い方があったけれど、わかる?」と言って気づかせてもよし、最初からストレートに「一人でよく言えたね。ここのところはこうだよ」と指摘してもよい。
10 上の要領で無理なく毎日練習を続けるうちに、一人で最初から最後までセリフを間違いなく通せる日が来る。担当がお母さんの場合、「よくできたね。お父さんが帰ったら聞いていただきましょう」と言って、お父さんの前で発表し、ほめてもらう、とよい。担当が逆の場合も同様。前提として、家族で子どもの発表を応援する姿勢を共有すること。
11 10で練習は終わりでなく、そこからがスタートである。このセリフはどのような気持ちをこめて言うのがよいか、誰の顔を見て言えばよいか、など、親がかりに舞台に立つならどういう点に気を付けるだろうか?と考えて、それを「小出しにして」伝えていく。結論を一方的に伝えるのではなく、子どもに「どう思う?」と問いかけ、やりとりを交わしながら一つ一つのセリフの持つ意味を子どもが理解し、納得の上声を出せるように導く。この過程を親としても楽しんでいただけたらと願う。
上で書いたことは、小学校の教科書を声に出して読む練習を指導するうえで大切な基礎になります。どうか、毎日10分を目途に親子で楽しく練習を継続していただきますようお願いいたします。