お山の幼稚園の教育とは
「今の時代は不足しているものが不足している」と言った人がいます。たしかに、何もかもが充足した環境は「便利」で「快適」であっても、苦労を乗り越えての「喜び」は感じにくくなっています。
知育偏重の現代、体格はできても体力がない、知識は豊富でも意志が弱い、けじめがない、人の痛みが分からない…etc。将来のためには、心とからだの健康づくりこそ、幼児期につちかっておかねばならない、教育の原点であろうと思います。
本園は別名を「お山の幼稚園」と呼ばれますように、全国でもまれな小高い山の上にある幼稚園として、自然に親しみ、心と体を丈夫にするにはもってこいの環境にあります。この最良の環境を生かして、強い体としっかりとした心の人間づくりに努力を捧げてまいりたいと存じます。
園長 山下太郎
自然のなかで過ごす意義
本園は東山三十六峰の一つ北白川山にあり、子ども達は自然に抱かれて毎日のびのびと過ごしています。
園内の二つ目の庭であるビオトープ・ガーデン“ひみつの庭”では、野鳥の声に耳を傾けながら季節ごとの植物、昆虫、水辺の生き物に出会い目をきらきらと輝かせます。
大木を通り抜ける風を感じながらしばらく歩くと、そこは園庭つづきの“ひみつの森”。ここでは五感をとぎすませて仲間と遊びます。そのまま森をぬけ、落ち葉を踏みしめる音のリズムを感じながら小川へ下ることもあります。
幼児期の子ども達にとって「今」一番大切なことは何でしょうか。四季が刻々と変化する自然の中で心を解き放ち、美しいもの、不思議なもの、神秘的なものとの出会いにより好奇心が守られるとともに豊かな感受性が育まれること。
ここに、人生の土台となる幼児期を過ごす上でもっとも意義深い「何か」があると信じて、今日も子ども達をお迎えしています。
副園長 山下育子
北白川幼稚園の沿革
昭和25年2月 北白川幼稚園設立認可。
昭和25年4月 北白川幼稚園開園。初代園長山下英吉、名誉園長島津源藏(島津製作所)。
昭和34年4月 園主山下英吉、園長山下一郎。
平成14年3月 学校法人北白川学園設立認可。
平成14年4月 同理事長山下一郎就任。
平成15年4月 園主山下一郎、園長山下太郎。
平成15年4月 「山の学校」設立。代表山下太郎。
平成16年4月 学校法人北白川学園理事長に山下太郎就任。
平成25年7月 新園庭完成。
園長著書のご紹介
山下一郎
『この道五十年』と『遺稿集』は、いずれも故山下一郎先生による幼児教育の体験的エッセイ集です。
山下太郎
ブログ(園長日記)の記事をまとめて教育の本を書きました(『お山の幼稚園で育つ』、世界思想社、2018/04/10)。朝日新聞に紹介記事が載りました。
歩いての登園、森の探検遊び、俳句の素読などユニークな実践をするお山の幼稚園。幼児教育は全ての教育の根っこと信じる園長が子ども達の無限の可能性を綴る。
――「ぐりとぐら」の著者・中川李枝子さん推薦!
よい本です。ぜひ読んでください。
長らく大学生を教えた著者は、幼児期の経験こそ学びの土台になると確信、専門のフィロソフィアを子どもから大人まで分かちあいたいと幼稚園の園長さんになった。すると子どもの幸せの根っこが次々に見えてきたではないか。フィロは愛、ソフィアは知、古今東西の賢人たちの名言と合わせて目の前の子ども一人一人がよくわかり、いっそういとおしくなる。
(世界思想社の紹介文より)