梅雨空がうらめしいのですが、天の川が気になる季節です。

キケローの「スキーピオーの夢」(『国家について』第6巻)の中に、銀河に関する記述があります。

しかし、スキーピオーよ、ここにいるおまえの祖父のように、おまえを生んだわたしのように、正義と義務を重んじよ。それは親と近親者に対して大切であるばかりか、祖国に対してもっとも大切なものである。そのような人生が天界に至る道であり、すでに生を終え身体から解き放たれて、おまえが見ているあの場所に住む者たちのこの集まりに至る道なのである』──それはまたひときわ明るい白い光によって炎の中で輝く環であった──『その環をおまえたちは──ギリシア人からそのように言葉として受け入れたのだが──乳の環と呼んでいる。』そこからすべてを眺めるわたしには、他の星々がみごとで驚嘆すべきものに見えた。(「スキーピオーの夢」16節)

「乳の輪」はミルキーウェイのことで銀河を意味します。

人がこの世の生を全うしたら天界に至るという考えはこの作品の主題になっています。

日本で天の川の伝説が人口に膾炙するように、西洋社会では彼の描いた宇宙の姿や惑星の奏でる妙なる音楽に関する記述が後々大きな影響を与えました。

欧米ではもしかしたら子どもでも知っているこの作品。日本での知名度は圧倒的に低いのが現状です。

翻訳はあるにはあるのですが、図書館においてあるかどうかも怪しいです。アマゾンだと中古品の出品しかなく、いずれも法外な値段がついています(キケロー選集<8> 『国家について』 『法律について』 、岡道男訳(1999)、岩波書店)。

5月に私が出した注釈本(『ラテン語を読む:キケロー「スキーピオーの夢」、ベレ出版』)は巻末に付録として現代語訳をつけています(上の岡訳は『国家について』全巻の訳ですが、私のはその第6巻のみの訳)。

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