一学期の終わり頃、帰り道で引率していた年長児がぽつりとこんなことを言いました。
「せんせい、なんでようちえんってあるんや?」と。続けて「ぼくは、はよう学校にいきたいわー」。
その子を見ていると、幼稚園がつまらないということではなく、むしろ友だちとも快活にやりとりし、幼稚園生活そのものを満喫している様子は日頃から十分うかがえますので、それだけに上の言葉は唐突で、驚いたことはたしかです。
こういうとき、答えらしい言葉を用意して説明するのはいかにも大人の立場で丸め込む感じがするので、できれば避けたいものです。「そうやな」、と基本は相手の声を肯定し、さらに言葉が出てくればそれもふまえながら、できるだけじっくり丁寧に対応することが大事だと思います。しかし、送迎中はそうもいかず、不完全燃焼に終わりました(たぶんその子も)。
といって、幼稚園の時間内に呼び出して「あれはどういう意味で言ったのか」と聞くのは絶対に避けるべきで(笑)、基本はじっくり様子を伺い観察することに尽きます(私の気づかない不満や不安がどこかに潜んでいないかという観点も含めて)。
いずれにしても、夏休みに入っても、その子の言葉は私の胸に刺さったままでした。原点に返って、幼稚園は何をするところなのか。幼稚園は何を重視しているのか。そのようなことをつらつら思う中、次の言葉に出会いました。
人間は、ひとりで喜ぶことはありません。喜びは、人との関係の中で生まれる感情です。人といっしょに喜びあう経験をたくさんすると、人の悲しみも感じることができる、人のことを思いやれる子どもになります。(佐々木正美)
家庭では味わえないものとして、「人(友だち)といっしょに喜び合う経験」があげられるのでしょう。
幼稚園でもっとも大切にしたいものはこれを置いてほかにないと思います。
これが生きる自信の源につながります。
向上心は自信から生まれる。自信は他者への信頼感から生まれる。他者への信頼感は愛されることによって生まれる。(佐々木正美)
もちろんこれが究極のこたえというわけではありません。
日々、実践を通じて自分が納得の出来る答えを模索していく必要があると思っています。