「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)」(『星の王子さま』(サン=テグジュペリ、内藤濯訳、岩波書店)
大人と子どもの違いは、経験と知識の差です。
正しいこと、間違ったこと、よいこと、悪いことの判断は、大人より子どもの方が純粋で正しい場合が少なくありません。
信号を守るのは子どもの方かもしれません。
「それくらいどうってことない」という甘えによって正邪の観念が逆転した大人の例は枚挙にいとまがありません。
よく、「そんなことは幼稚園児でもわかる」というフレーズを耳にしますが、私から言わせれば、子どもに対して失礼な言い草だと思います。
もちろん、子どもも人間であり、「それくらいどうってことない」と自分で自分を甘やかす場合もしばしばあります。
幼児教育の鍵は、子どもが判断を間違った時、タイミングを見逃さず、「ほんとうにそれでいいの?」と問うことです。
子どもたちが本来の価値判断を守れるように、適切なタイミングで示唆を与えることです。
どうすればそれができるのか?
大人は一人の人間として、常に自分で自分の価値判断を正しくチェックすることが大事です。
子どもは周りの大人のように育ちます。
たとえ世の中が不正にまみれて見えるとしても、子どものもっとも側にいる大人は、自らの行いによって、子どもの「三つ子の魂」を終生正しく、清らかに保てるよう力を尽くすことは可能であり、そう信じて務めなければならない、と思います。