就園前の保護者から、「入園前にこれだけはしておいてほしい、というようなことはなにかありますか?」とお尋ねいただくことがあります。よいチャンスなので私の考えを書かせてもらいます。

私は「家族で過ごす時間を大切にしていただきたい、と思います。「飛ぶ前にしゃがむ」という言い方がありますが、家族で心の絆をしっかり深めてもらうことが、幼稚園という社会生活を送る上で何よりの糧になります。

抽象的な言い方になりますが、親として子どもの未来を思うあまり、「子の代わりに親が不安になる」症候群も時折見受けられます。

未来より、今の「家庭」での生活をじっくりと見つめて下さい。家でのお父さんの役割、お母さんの役割をみつめてほしいと思います。読み書きを学ぶ以前に、両親といっぱい散歩を楽しみ、夜寝る前に絵本を読んでもらう子は幸せです。一緒に散歩を楽しむなら、携帯電話は不要です。

わが子を見つめることは過保護とはいいません。過保護は、親の取り越し苦労に根ざします。未来の不安を先読みし、その原因を先回りして取り除くこと。そのことがかえって子どもの「苦労を乗り越える喜び」を奪っていないか、ということです。

子どもの寝顔を見ながら、今この子は「幸せかどうか」を自問すればよいでしょう。育児書と照らして答えが出るものではありません。その幸せはモノがもたらすものでもありません。

この先は、夫婦でよくお話を交わしてほしいので、何も書きません。子どもの「今の幸せ」をご両親が自分の幸せとして実感できる家庭であるかぎり、その子の未来にはなんの不安もありません。たとえ、いかなる運命が待ち受けようとも、その子には困難を乗り越える力が備わっていると思われるからです。

関連記事: