ローマの哲人セネカは希望と不安は表裏一体という考え方を伝えています。

これをもとにしたエッセイを以前山びこ通信(山の学校の機関誌)に寄せました。

>>希望と不安の中で 今を生きること

子どもたちの未来にも思いをはせながら、「今を生きよ」の言葉をかみしめています。

短期的な視点での「希望」(目標達成)と長期的な視野に立っての「希望」を区別することが大前提です。

夢や希望はダメなのか?ということではなく、セネカが批判するのは前者の「希望」です。

後者は、たとえば日本昔話の正直爺さんが抱くような夢や希望です。

エッセイの中ではスティーブ・ジョブズのドットの話を紹介していますが、正直爺さんの生き方を現代的に説明すればジョブズの考えがわかりやすいと思います。

一言で言えば、「人間万事塞翁が馬」ということです。「人事を尽くして天命を待つ」も近いと思います。

ローマの風刺詩人ユウェナーリスは、意地悪爺さん的「夢や希望」をあまりにも多く持ち過ぎて神様を困らせている人間たちを皮肉って、「健全な精神が健全な肉体に宿りますように」という言葉を残しました。

あれこれ欲望の赴くまま好き勝手を神様にお願いしてはだめで、お願いするなら、「心と体が健全でありますように」という程度にしておくのがよい、という趣旨です。

一時、「健全な精神は健全な肉体に宿る」と引用されて誤解を生むことになる表現ですが、日本のスポーツメーカーのアシックスはこの言葉を本来の意味で理解したうえ、ASICSの会社名を考案しました。

元のラテン語のMens Sana In Corpore Sanoの頭文字MSICSのうち、最初のMensをAnimus(どちらも精神、魂を意味する)に変えてASICSとしたとのことです。

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