今日は三学期の保護者会を開きました。

ご来場いただきありがとうございました。

「勉強で遊ぶ」というときの「遊ぶ」は「熱中する」、「夢中になる」という意味だとご説明しました。

最後に紹介した、日本はなぜ今も漢字を使い続けているのかという話題は、英語学習における文法の重要性とも関係しています。

今日の全体の話に比べるとおまけの話ですが、言葉足らずに感じられたので以下の通り補足いたします(長文となります)。

英文法はラテン語文法と瓜二つです。

ラテン語は西洋の古典文化を今に伝える言語です。

漢字は東洋の古典文化を今に伝えます。

私たちは漢文を学び、漢字を学びます。

欧米人はラテン語を学び、自分たちの古典文化を学びます。

ただし欧米社会において、ラテン語を学べる人は圧倒的に限られています。

学ぶ人と学ばない人との間に格差が生じます(意図的にそうしています)。

日本社会において、漢字を学ぶ人は小学一年生以上全員です(しかも無料)!

この措置によってどれだけ大きな恩恵を日本社会ならびに我々一人一人が得ているかは、なかなか想像できません。

私は子どもたちが「漢字」をしっかり学んでほしいと願っています。

一方、ラテン語を学ぶ意義は日本人にとっても(or 東洋人にとっても)小さくありません。

西洋古典文化は意図的に「人間とは何か」という普遍的テーマを追求しているからです。

私は格差社会をのしあがる手段としてではなく(あるフランスの小説にその話題が扱われています)、純粋に西洋文化を根っこから学ぶために、一人一人がより豊かな社会を築く立派な市民になるために、西洋の古典文化にも目を向ける同志の数を増やしたいと思って幼稚園の放課後に山の学校を開いています。

東洋の古典文化を知る我々が西洋の古典文化も視野に入れて学べば最強です(笑)。

私たちはその気になれば「誰もが」漢文の名言・名句を引用しその意味を理解できるように、少しの条件を満たせば西洋の古典文化に対して同じ態度をとることができます。

その一つが「英文法」をしっかり学ぶことです。

(私の時代の基準でいうと)中学でその8割を学び、SVOCや仮定法など残り少しを高校で学ぶあの「英文法」を、です。

この知識があれば、ラテン語の山登りは5合目に立っているも同然です(本当です)。

発音はローマ字読みであり、日本人にはお手の物です。

従来は日本社会においても、ラテン語(・ギリシャ語)を学ぶ機会は一部の大学に限られていました。

本屋でラテン語の教科書を手にとっても解答は載っていません。大学の授業用の教科書しか売っていませんでした。

今から10年前(2013年)私は解答と解説のついたラテン語の教科書を世に出しました。

英文法を理解できる人はこの教科書を使って誰もが独学できます(ギリシャ語も山の学校の元講師による同様の教科書が世に出ました)。

おかげさまでこの本は予想以上によく売れています。

一昔前はごく限られた大学の学生しか学ばない言語でしたが、今では徐々にラテン語を独習する人の数が増えつつあります。

ただし、今後日本の教育で英文法をあまり教えなくなると、せかっくの日本人のアドバンテージを生かせなくなります。

ちなみにラテン語をやらなくても日本は立派にやっていけるという反論が予想されますが、私はその「立派に」という言葉に疑問を持っているひとりです。

チャンスさえあればやっていたのに(チャンスがなくてできなかった)という人を対象に本を書いています。そしてこの文を書いています。

その結果何が見えてくるのか、どのような視点が手に入るのかはやった人にしかわかりません。

英語を話したい人は音楽・スポーツのように学ぶとよいでしょう(その方がはるかに効率よく学べます)。

実用としての英語と教養としての英語の二つの顔があり、私は後者の話をしています。

子どもたちの教育をどうするかについて、文科省のシナリオ通りに進む必要はありません。

学校で英文法を丁寧に教えなくなる方向に進むにせよ、個々の家庭で(あるいは塾で)伝統的英文法を学ぶ機会があれば「(西洋文化の根っこにつながる学習ができて)ありがたい」と思って力をいれることをお勧めします。

学歴にこだわるのもよいですが、今後の混沌とした時代をめいめいが自信をもって生きていくうえで、私は(1)漢字と(2)英語(とくに英文法)の二つにしっかり取り組むことを強くお勧めします。さらに欲をいえば(3)数学の証明問題も加えたいところです。

そして、これらの学習機会が公教育で無料提供されている事実に私は一国民として胸を張りたいと思います。

年長児にとっては春から始まる小学校生活。どの科目も大切ですが、とりわけ漢字の読み書きを中心とした国語の勉強を「つかず離れず根気よく」学び続けてもらえたらと願っています。

助走期間における付き添い方については、今日の年長対象の保護者会でたっぷりお話ししました。ぜひよいスタートをきってください。

<補足>
現代の英語表現におけるラテン語は語彙の面でも大きな影響を及ぼしています(語彙の60~70パーセントはラテン語由来)。漢字学習において偏と旁を知ることは重要です。部首が「さんずい」なら水に関係しています。同様に英単語の接頭辞(ラテン語由来)に注意すると単語の意味が推し量れる場合が多くあります。in(im)-は「中に」、ex-は「外に」を知れば、impression(印象)とexpression(表現)の対比も理解できます。ちなみに両者ともラテン語のimpressio / expressio に由来します。

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