五月から毎週火曜日の朝、年長児に俳句を教えています。教えると言っても、園児たちといっしょに黙想し、芭蕉や一茶の俳句を何度も繰り返し朗唱するのみ、です。知識の伝達に重きを置いているのではなく、この取り組みを通じて「聞くときにはしっかり集中して聞く姿勢」を養ってもらいたい、と念じて先々代の園長の頃から続いている、本園ならではの取り組みと言えるでしょう。
一回目、二回目に取り組んだ俳句は次の二句です。
かたつぶり そろそろ登れ 冨士の山 一茶
五月雨を 集めて早し 最上川 芭蕉
今日は子どもたちに新しい俳句を紹介しました。何の俳句を扱うか、事前に誰もわかりません。私が紹介するときにしっかりと集中して聞いていないといけません。
紹介したのは、「昼見れば 首筋赤き 蛍かな 芭蕉」です。
何度もみんなで声をあわせて唱えました。その間、私は自分も声を出しながら、全員のお顔をくまなく見ています。よそ見をしていないか、etc. を見ながら、目を合わせ注意を喚起することもあります。
今日、おわりがけに、園児たちにお話ししたのは、「よい姿勢をして練習に取り組まないと、みんなの俳句の『風船』に穴があいてすーっと『覚えたこと』が抜けていってしまう」ということでした。「俳句の風船」というのはもちろん私が勝手に作った「比喩」です。
子どもにわかりやすいイメージを考えて、そう述べました。全員で声をあわせ、何度も繰り返し声に出していると、どんどん風船は大きくなります。でも、練習をしなければ、覚えたこともだんだん忘れていきます。また、ぼんやりお話を聞いているだけだと頭から言葉が抜けていきます。
このお話をしたあとで、「あと一回全員で声をあわせて終りにしましょう」と言いました。でも、最後の「芭蕉」と言うところで、ある一人の子が少しふざけた言い方をしたのが耳に入りました。そこで、「年長ぐみ全員でふくらませた風船も、そういうふざけたことをすると、針で穴をあけることになるよ。今、すーぅっと空気が抜けていく音が聞こえる。さあ、こんどこそ、みんなでしっかり声をあわせてがんばろうね」と言いました。
もちろん、注意を促した後ですから、今日の取り組みの中で一番よい形でフィニッシュすることができました。
来週は、今まで扱った3つの俳句を最初から繰り返す予定です。
少しずつ、園児たちが「自分の俳句」をつくって提出してくれるようになりました。朝、そんな俳句の書かれた紙を受け取るのが嬉しいこの頃です。