このブログで何度もご紹介しているラテン語の格言があります。
Post nubila Phoebus.(ポスト・ヌービラ・ポエブス)というものです。
「雨の後に太陽。/ 雨雲の向こうに太陽」と訳せます。
日本語に「やまない雨はない」という表現がありますが、同じ内容を伝えるのがこのラテン語の格言です。ポエブス(ギリシャ語はポイボス)は太陽神アポロ(Apollō)の呼称ですが、ここでは太陽の意味で使われています。雨がやんで太陽が輝き出すのは、太古から変わらぬ自然の摂理です。この事実に着想を得て、いつしかこの格言が生まれ、広く使われるようになりました。文字通りに訳すと「雨雲の後の太陽」となります。
雨雲は不幸や災難を象徴しています。どんなに辛いことがあっても「やまぬ雨はない」ように、雨の後は必ず晴れの日が訪れます。このように信じられるとき、くじけそうな心に光が差し込みます。類似したラテン語の格言として、Per aspera ad astra.(苦難を通じて栄光へ)があります。
一方、前置詞 post は時間的な「後」に加えて、空間的な前後関係をも示し、「向こうに」という意味も持ちます。postをこのように解釈すると、「雲の後ろに太陽(が存在する)」と訳せます。この場合、「たとえ雨雲が空を覆っていても太陽の存在を疑うことができないように、世の中がどれほど不正の黒雲に覆われていても、真・善・美の存在を疑うことはできない」といった解釈が可能になります。