西洋古典文学というとわかりづらいのですが、子ども向けに書かれたイントロとしては、ギリシア神話関連の読み物やイソップ物語が有名なところでしょう。

日本の昔話と同様、ギリシア神話という「作品」はなく、すべて語り継がれたものです。子ども向けの「ギリシア神話」はあらすじが書いてあるに過ぎず、大人が読んで面白いかどうかは疑問です。

何と言っても大人向けにお勧めできるのは(実は小学生にも大いに勧められるのは)、ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』です。上下二巻に分かれていますが、岩波文庫に入っています。訳者は中村善也先生で、日本語自体がたいへん読みやすく、お勧めです。

王道はホメロス、ヘシオドスの作品を一つずつ(翻訳でよいので)読んでいくことでしょうが、オウィディウスの作品が個人的には一押しです(ここを入り口とすれば、西洋古典文学に入りやすい)。

上下二巻に分かれていますが、一つ一つのエピソードは短く、適当なページを開いて気に入った一話ずつ読んでいけばよいのです。それこそ、子ども時代に読んだ「ギリシア神話」の有名どころの話(たとえば「エコーとナルキッソス」)が、彩鮮やかに蘇ります。そのさい、驚きの発見も得られます。たとえば、「ピュラモスとティスベ」の話を読めば、「ロメオとジュリエット」の話の原型ではないかと気づきます(たぶんそうでしょう)。

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