今日は敬老の日です。
人が老いることについて、古来より人類は様々な解釈を行ってきました。
東洋の解釈の伝統は日本の文化として今に生きています。今更言及するまでもありません。
一方、西洋文化には西洋文化なりの老年論の伝統があります。
そのあらましは、二千年前のローマの哲人キケローの『老年について』で知ることができます。
岩波文庫で翻訳を読むことができます(薄い本です)。
世間は老年時代を嫌悪するがそれは間違っている、とキケローは言います。
世間の非難する理由(体力や気力が衰えるとか、死の恐怖が大きくなるとか)を一つ一つ取り上げ、すべて反論してみせます。
キケローは弁護士でもあり、一つ一つ根拠を挙げながら反論する姿勢は、法廷で「老年」という被告を弁護しているかのようです。
若年時代から確かな人生観、死生観をもって日々誠実に生きた暁に迎える老年は何にも代えがたい価値がある、というのがキケローの結論です。
逆に世間が「老年」に与える非難はすべて、そうした生き方をしてこなかった「つけ」に対してなされるべきものだということで、これはこれで手厳しい意見です。
そう考えるとき、この作品は老若男女問わず読むに値する古典作品だと言えます。