どの幼稚園にも保育園にも絵本はあります。ご家庭にもあるでしょう。
私はよく幼稚園の先生に、「絵本がなくても子どもたちに自分の物語を語ってください」とお願いしています。子どもたちは、先生自身の体験した話や思い出話をすると、目を輝かせて聞き入ります。
似た例として、「ピアノがなくても自分の音楽を歌ってください」とお願いすることもあります。たとえば、大雨が降って、子どもたちと何もない場所で雨宿りをしなければならないとき、子どもたちとどのような時間が過ごせるでしょう?
子どもたちに伝えたいもの、語りたいものを持つ人は、絵本やピアノがなくても平気です。「平気ですか?」と私が尋ねて、「はい、平気です」と笑顔で言えるよう日頃からあらゆる準備のできる先生でいてください、というのが私が常々本園の先生全員にお願いしていることです。
実際、そのような先生が絵本やピアノを生かしきる力を持つ人です。
もう少し具体的に言いましょう。
本園では毎月幼稚園の先生に「絵本通信」を書いてもらっています。自分にとってお気に入りの絵本の紹介ですが、どうして自分にとってこの本が大切なのか、それを語るうちに、幼い日の思い出を語ったり、今の自分の夢や希望を語ることにつながっていきます。気づくと、すでに10年分、100冊以上の紹介文があります。私も育子先生も書いています。
絵本とは何か?
私は「絵本は思い出である」と思います。
自分の子ども時代の愛読書を読むのは「思い出を語る」王道です。「お母さんはこの本を何度もおばあちゃんに読んでもらったのよ」と言葉を添えて読んであげる、等。
音楽についても様々な教育的意義が議論されますが、絵本と同じ理屈で言えば、子守唄ひとつあれば子どもたちはすこやかに育つと思います。