この日は各クラスでお別れ会を行いました。先生がペープシアターをして一年を振り返ったり、手品をしたり、クラスによっては楽器の演奏もありました。先生によるパフォーマンスは、今年は4月からお誕生会でおなじみです。誕生会では私もIkuko 先生も初回に持ちネタを披露しましたが、毎月それぞれの先生にこんな特技があったのか、と驚かされることしきりでした。
そんななか、私とIkuko先生は年長クラスから「歌のプレゼントをしたい」という招待状をもらっていました。全員が勢揃いして歌ってくれたのは懐かしい「ありがとうの花」でした。最前列は女の子の列でしたが、大きな口を開けて自信満々歌ってくれました。
続いて、私からの出し物として、「紙芝居」と「映画」の上映をしました。紙芝居は「ぬまのぬしからの手紙」という少し怖い、しかし、最後に心を打つオチのある作品でした。日頃から「怖い話をして」とみなにせがまれながらも、送迎の途上だと十分に話しをすることができず、私も子どもたちも不完全燃焼の状態でしたから、この日は力いっぱい大きな声で紙芝居をしました。
「映画」は二本。どちらも抱腹絶倒。片方はディズニーの短編ですが、毎年上映してきた定番中の定番です。園舎がひっくり返るくらいの大笑いに包まれながら、楽しい時間はあっという間にフィナーレに。
この日は、皆で手を繋いで帰る最後の日でした。
帰る間際まで笑顔いっぱいの子どもたち。
ふりかえると、今年は私自身京都府私立幼稚園連盟の理事を拝命し、新採研の担当になりました。京都府で採用された200人近くの新人教育の責任を負う大役ですが、年長のTomomi先生に運営委員としてお手伝いをお願いしました。この公的な場で取り組む課題やテーマを自園の教育にも取り入れたい、と考えるのは自然なことのなりゆきです。そんなわけで、この一年は自園の教育のさらなるレベルアップを図るべく、まずはTomomi 先生のクラスにて、また同時に年長の学年にて、様々ないわば実験的取り組みを展開した部分がありました。「森でとことん遊ぼう」というテーマもその一つです。
新年度開始早々、近くの森や沢に出かけたり、谷を登ったり滑り降りたり・・・。今までにましてワイルドな活動を繰り広げました。そのまま山猿状態になりはせぬかと思いきや、室内の諸活動も楽しみながら、かつ集中して取り組めました。たとえば俳句の黙想では最終的に平均3分目をつぶり、11月の時点で全員手を上げて一人で発表することもできていました(先代園長も今から15年前は「2分ももたない」とエッセイに記していたように3分は子どもにとってはとても長いです)。そして迎えた3学期の劇の発表会。かつてないほど、初回の練習から盛り上がり、最後まで元気いっぱい、笑顔いっぱいの取り組みができたと思います。つまり、やるときはやる、遊ぶときはとことん遊ぶ、というメリハリがついた一年でした。
また、下の学年にはほんとうに優しく、心あたたまる場面の数々が今走馬灯のように浮かびます。
この日は最終日ということで、私は第1グループを引率したのですが、帰る道すがら、年長男児の表情やしぐさがいつになくセンチメンタルだなと思っていると、「ぼくはなあ・・・。せんせいのはなしはいつもおもしろかった」と言って、うっすら涙が浮かんでいたので驚かされました。そういえば、最前列にくるたび、クイズやら素話やらを要求され、できるかぎりつきあったことが思い出されました。
もっとも彼は次の瞬間には、「むかーしむかし、あるところにこころのやさしい園長先生と Ikuko 先生が住んでいました。二人はびんぼうで(笑)・・・」と劇『かさじぞう』出だしのパロディーを言って回りを大笑いさせてくれたのでした。
こうしてふりかえっていくと、私自身、この一年たくさんの思い出が蘇りますが、子どもたちがこの幼稚園生活の楽しかった思い出を「思い出」として反芻するのは、随分先の大人になってからのことでしょう。その頃にもお山の幼稚園が変わらずここにあればいい、否、あらねばならぬ、と思うのでした。