本は楽しく読めばよいと思います。
ただ、年齢を重ねると、本を読む意味をあれこれ考えるようになります。
いろいろ考えてきた中で、次の意見は傾聴に値します。最後の「君は君自身でいたまえ」にアンダーラインです。
学校の勉強で、英語以前に国語と数学が大事だと思うのは、両者が読書(精読)を支えるからです。そして、丁寧な読書は人生を支えます(量でなく質が大事)。
小林秀雄の「読書について」(抜粋)。
「書物の数だけ思想があり、思想の数だけ人間がいるという、在るがままの世間の姿だけを信ずれば足りるのだ。なぜ人間は、実生活で、論証の確かさだけで人を説得する不可能を承知しながら、書物の世界にはいると、論証こそすべてだという無邪気な迷信家となるのだろう。また実生活では、まるで違った個性の間に知己ができることを見ながら、彼の思想は全然誤っているなどと怒鳴り立てるようになるのだろう。あるいはまた、人間はほんの気まぐれから殺し合いもするものだと知っていながら、自分とやや類似した観念を宿した頭に出会って、友人を得たなどと思い込むに至るか
みんな書物から人間が現れるのを待ち切れないからである。人間が現れるまで待っていたら、その人間は諸君に言うであろう。君は君自身でい給え、と。一流の思想家のぎりぎりの思想というものは、それ以外の忠告を絶対にしてはいない。諸君になんの不足があると言うのか。(「読書について」)