数学者岡潔氏の言葉を紹介します。
すべて成熟は早すぎるより遅すぎる方がよい。これが教育というものの根本原理だと思う。岡潔『春宵十話』より
チューリップの球根を同時に植えても、早く花を咲かせるものもあれば成長のゆっくりなものもあり、自然を手本に考えれば、岡氏の言葉はそのとおりだと思います。
一目散に飛び出すのが自然なら、それは一つの個性です。
無理にゆっくりしなさいとブレーキをかけすぎるのも考え物となります。
同様に、じっくりゆっくり成長するのが自然なら、無理に早くしなさい、とけしかける必要もない、ということになります。
幼稚園では、「早い」性質の子には落ち着いてじっくり取り組む道もあることを伝えます。大人でもそうですが、「できる」自信が過信となり、油断につながったり、初歩的な見落としにつながるようではいけません。
一方、「ゆっくり」の子の場合、見た目の「できない」という態度が(親や担任への)甘えによるものなら、それは励ます必要もあります。
大人の目から見ると、子どもはみな小さくて未熟に見えるので、ややもすれば、「できない」から代わりに「やってあげる」、とか、「できない」ことをそのままにして許すことはよくあることです。
でも、「できない」あるいは「つたない」ように見えて、どの子も本当は一歩一歩、たとえ牛歩の歩みに見えても、成長する自分を夢見ています。
大人として、無理強いするのは禁物ですが、何もふれずに置くのが正解というのでもありません。
子どもの表情をよく観察し、その子の笑顔がどの領域でもっとも輝くだろうか、見守ることが大事です。
幼稚園では、一人一人の「できること」と「できないこと」を日ごろから丁寧にふりかえり、放課後は、そうしたことについて、送迎の先生も含め、情報交換を行っています。