先日ご紹介したオウィディウスの『変身物語』にエコーの話があります。
ナルキッソスは水仙に、エコーはこだまに姿を変える、という2つの悲劇が1つのエピソードとして語られます。
(ナルキッソスは自己愛のために(=他者を愛することを軽視する態度が愛の神の逆鱗に触れます)、エコーはおしゃべりのために(=意図的におしゃべりをすることで時間稼ぎをしてゼウスを助けたことでヘラの怒りを買います)。
両者の関係はいかに?
岩波文庫で二冊から成ります。一つ一つのエピソードが詳細に描き込まれ思わず引き込まれます。私たちが「ギリシャ神話」というあらすじだけをまとめた本から得られる情報よりも、はるかに濃密で心揺さぶられる記述に出会い、2千年前の古典社会にこのような文学があったのか、と驚かずにはいられません。